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第12回 ほんとうの文字色

最後にもう一度、「赤文字系」とはなにかについておさらいしておこう。

赤文字系とは、女子大生・若年OLなどの20歳代前半ぐらいの女性を対象としたファッション雑誌「赤文字系雑誌」の総称である。単に赤文字系と呼ぶこともある。具体的には 『JJ』『ViVi』Ray』『CanCam』の4誌であり、各誌とも題字が赤またはピンクなどの赤系色であることからこの名称がつけられた。
対して、「青文字系雑誌」とは『Zipper』『CUTiE』といった東京の原宿などで多く見かける個性的で同性受けするファッションおよびそれらを多く取り上げる雑誌のことである。

こうしたことについて、一年間延々と書き続けていたら、「あの雑誌はなに系?」「じゃあこの雑誌は?」と聞かれることが増えた。しかし、雑誌も多様化しており、『小悪魔ageha』のようなギャル系、『リンネル』などのナチュラル系をいったい何系と言ってよいのか、色では示すのは難しいのである。しかも、「『Zipper』って青文字じゃなかったの?」といぶかしげに問われて電車の中吊り中吊りを見たら「あれ、ピンクだ……」というようなことが多々ある。雑誌自体が春っぽさ、クリスマスらしさなど、季節感などを生かしたロゴ色を月ごとに採用することがふえたので、すでに色で雑誌のジャンルをくくることは「概念」でしかないのであった。
 
さて、読者のかたにはtwitterを利用されているかたも多いと思う。ほかの媒体と同様、さまざまな雑誌が公式twitterで情報をツイートしている。そこで、それらを集中的にフォローし、アイコンを並べてみた。すると、面白いことがわかった。雑誌内容の傾向にかかわらず、ほとんどがピンク色を基調としたアイコンなのである。かわいらしさを売りにしている赤文字系雑誌はもちろんのこと、大人を目指しているはずの『25ans』や『FRau』『CREA』『Vogue』などまでがピンクのアイコンで、それらのツイートがタイムラインにぞろぞろ並ぶと、正直なところ、内容にもさほど差異がないことから、どれがどれやら見分けがつかなくなって途方に暮れるのであった。ここからわかったことは、女性はおおかた「ピンクが好き」「かわいいものが好まれる」「やわらかい印象が求められている」と考えられていることであって、どんな服を着ていようが何を考えていようが、しょせん同じ方向を向いたマーケットとしてとらえられているのではないかということであった。
 
なぜ現代詩を書く女性には赤文字が少ないのか、そのことを考え始めたのが今年の初めなのだが、今年の中ごろには赤文字系の代表である『Cancam』の編集長交代で赤文字系は目指す方向を転換しはじめたといってよいだろう。「カワイイ」「モテ」を目指していたはずが「プニ子「(マシュマロ女子=ぽっちゃりした女の子)や「TNJ(たいしたことないじゃん)くらいがちょうどいい」などと言い始められては、これまでのモテ路線はなんだったのかと、頭を抱えてしまうしかないのである。その点、かわらずきゃりーぱみゅぱみゅなど、世間には受け入れられづらいけれど、会社にそのままいったら叱られるであろうけれども、一見こだわりを持っているように思える青文字系などのほうがまだ一本筋があるように思えてしまう。もっとも、これは雑誌=教典の方針のことであって、ユーザー=信者の意思がどうなのかはさだかではないが。

この先、どんな服を着た女の子たちが現代詩を書き始めるのか、現代詩を書いている女の子はどんな服に着替えるのか。それはまた、時代とともに変わってゆくであろう、現代詩を書く女の子にはどうして赤文字系の服を好む層が少ないのか。一年考えてみたけれど、確かな答えは出なかったので、まだしばらく見守りつつ、改めて考えてゆきたいと思う次第である。
# by tomo4u2u | 2013-12-20 14:57 | 現代詩赤文字系

第12回 アーケオロジカル・サマー(2)

遺跡の上の方の重要でない層は「エンピ(円匙)」と呼ばれるシャベルでざくざく掘る。掘った土はネコ(手押し車)に載せて「ネコ山」に運ぶ。エンピから直接山に盛る動作を「エンピ投げ」という。複数の大学から人が集まるような現場では「○大の奴、エンピ投げできねーぜ(使えねー)」と笑われるので、習得必須である。遺物が発見できそうな層にたどりついたら、今度は「ジョレン」と呼ばれる鋤で少しずつ削るようにして土をはがしてゆく。時間がかかるので、延々とこの作業が何日も何日も繰り返される。遺物を見つけたら、その周りの土をを「イショク」というスコップで丁寧に除去し、位置を図面に落とす。後で写真にも撮る。そうして作業を続け、1週目が終わるころから、ぼちぼちと石器が出土し始めた(見つけたからと言って、手で拾い上げてはいけません。正確な場所を記録できなくなります)。最初はうれしいのだが、ひとつひとつ取り上げる作業の面倒さに、だんだんわずらわしくなってくる。勝手なものだ。それで、みんなだんだん「あったー!」という叫びが小さくなっていく。そんな中で、ひとり声を上げていない人物が存在することにみんな気付き始めた。「Nはまだひとつも発見していない」……そう、一人影を背負って無言の男がいる。浅野忠信似の長身モテ男・Nはまだひとつも発見できていないのだ。みんななんとなくNの方を気にするようになった。そして、ある休憩時間に秘密会議が開催された。それから数時間、I君のジョレンに感触があった。I君が手を止め、それに気付いたみんながかたずをのんで見守る。

「N、おれここの風景飽きたから場所変わってくれない?」「なんでだよ」「いーじゃん」I君の持ち場に行ってジョレンを数回使うと、Nが「あっ」という。

「あったー」と無邪気な声を出して笑うが、みんな、もちろんN本人も、I君ががわざとそこを掘らせたことに気づいている。「よかったなー」とか言ってみんなで笑いあう炎天下のこの茶番!なんだこの青春!そのあともNはみんなと持ち場をちょっとずつ交代するのだが、彼が担当する場所は、どうしてか何も出土しないのであった。
 
ところで、女子にとって現場で超重要なことのひとつに、「日焼け対策」がある。長袖を着て、タオルには首を巻き、軍手をして顔だってもちろんSPF値の高い日焼け止めやファンデーションを塗りまくって、素肌を1ミリだってさらさずに過ごした2週間。ほら、腕も脚も白いまま!完璧!!と自分に納得していた。実習が終わった日、街へ帰るのに普段の夏服に久しぶりに通して、ほら、いままで泥だらけの仕事をしてたなんて思えないでしょ、と鼻歌なんか歌いながら当時は長かった髪の毛を結ぼうとしていた。するとHが「ちょっとー、やだー」とケタケタ笑うのである。笑い転げるのである。なになに?みんな集まってきて「あー」という。そして笑う。ずっと下を向いて作業している間に首に巻いたタオルがずずずーとずれていき、服との境目が太陽にさらされてしまっていたのだ。自分では見えない三日月形の日焼けはいつまでも居座って、翌春のサークルの春合宿のお風呂で、また笑われることになるなど、この時はまだ予想だにしていなかったのだ。だから、というわけではないのだが、わたしは「うなじって色っぽいよな」という男は信用しないことにしている。関係ないんだけれども、なんとなく。なんとなく。


# by tomo4u2u | 2013-12-05 23:56 | エンゼルパイのミーム

第11回 文字をください

ゼロ年代、デフレまっただ中の日本はユニクロに取りこまれていった。そして黒船はやってきた。09年春の原宿、アメリカ発のファストファッション「FOREVER21」に群がる人々。ハンガーからつるされたくしゃくしゃなワンピースやブラウスを大量に買って、黄色い袋に詰めて持ち歩く人が、なんと多かったことか。そして、マツキヨやドンキと同じ色合い、黄色と黒……万国共通の安い色……。

 いま、大学生の多くは、LAWRY'S FARMやearth music&ecologyの服を着ている。LAWRY'S FARMは今はノンノモデルの波瑠、earth music&ecologyは宮崎あおいがブランドキャラクターになり、CMも放送されている。このふたつのブランドは、13年11月現在、LAWRY'S FARMが「わたしらしい時、わたしらしい服」、earth music&ecologyが「あした、なに着て生きてていく?」がキャッチコピーである。自然体がウリなのである。結局のところ、がんばって自分をつくってモテよう!お金もかけよう!という赤文字系の時代は終焉を迎えているのかもしれない。
 先日、一般社団法人日本ABC協会が今年上半期の雑誌販売部数を発表した。上位25誌のうち、いわゆる「赤文字系雑誌」は8位の『ViVi』と24位の『CanCam』のみであり、さびしいかぎりである。一方で『Oggi』『Classy』『VERY』など、赤文字系を卒業した世代をターゲットにした雑誌が多くランクインしていることは、20代前半の女性の雑誌離れをよくあらわしているのかもしれない。また、多くの女性ファッション誌は持ち歩きに適さないが、「バッグサイズ」と呼ばれるA5サイズを併発する動きや、電子書籍としての発行も併せて考えるべきであろう。

 ランキングで目立つのは「宝島社」の雑誌が多さである。『宝島』や『別冊宝島』の発行で知られていた宝島社は、90年代に『SPRiNG』を嚆矢として女性ファッション誌の発行に乗り出し、『Spring』の成功により、女性ファッション誌分野である一定のシェアを得ることに成功した。また、ここ数年は「付録ブーム」に載って『ブランドムック』を企画、これが成功している。

 宝島社のファッション誌がウケていることは、もしかしたら現代詩の世界には、あまりよいことではないかもしれない。宝島社の雑誌には、とてもかわいい、きれいな写真が多いのだが、字が少ないのだ。赤文字系の雑誌に見られるような、余白を許さない情報量の多さに慣れていると「読むところがない!」と感じるのである。量がほどほどで、文章内容の質も高めな集英社系の『MORE』『non・no』『seventeen』が2、3、4位を占めている(きっと読者が浮気をせずに成長している)ので、そのあたりは安心材料ともいえるが、宝島社の雑誌に慣れてしまった頭では、もうたくさんの文字は読んでもらえないかもしれない。散文詩は退散するしかなく、行分け詩も一読して意味がわからないものは却下、結局残るのはポエムなのだろうか。情報処理能力を養うためには、やっぱり赤文字系くらい字のつまった雑誌を、女の子たちには読んでもらいたいと思うのである。宝島系の雑誌、かわいいけれども。
# by tomo4u2u | 2013-11-20 20:54 | 現代詩赤文字系

第11回 アーケオロジカル・サマー!(1)

大学の、文学部史学科というところを卒業している。入学前から決まっているところもあるが、多くの大学では2年生くらいから日本史・東洋史・西洋史・考古学などの専攻にわかれる。なんだか外遊びも嫌いだし、ミイラとかそんなものにも興味がないが、考古学を専攻してみた(その後大学院で日本近代史を専攻するのだが、それはまた別の話)。で、大学2年生の8月のお盆明け、はじめての実習に出かけた。大学が某企業から委託されていた千葉のその「現場」は無人駅から車で数十分。2年生は男子7名、女子4名の11名と先生と助手・院生の先輩がたというメンツ。
 
よくテレビなどで、きらきらした遺物を刷毛できれいにしているが、あんなことはしない。都会なら表層部をユンボ(ショベルカー)ではがして、それからガシガシ掘って、ここぞというところを、少しずつ土をはがしていくのである。この現場は田舎なのでアスファルトなどはないが、草ぼうぼうなので、まず草を刈る。生まれて初めてのカマだが、それなりに刈れる。イケるじゃないか、わたし! と思っていると先生がそばに立って、無言で見下ろしている。「何をやってるの、君は?」「?」「反対だよ……持つ方向が……」「えええ! だって、刃をこちらに向けたら危ないじゃないですか!脚がもげます!」「見てなさい」そして先生は左手で草をつかみ、じょり。なるほど!カマの刃は自分の力で止めるんだな!遠心力で自分の方にぶーーーんと飛んでくるのかと思っていた!刈ったつもりで、わたしは向こう側へと草をなぎ倒しただけだったのである。

最初の日は、そのようにしてまだまだ掘るまでには至らない。期間は2週間。近くの大きなプレハブ小屋に泊まり込むのである。夜は宴会である。考古学専攻の人というのは、どこの大学でもとにかくお酒が好きだ。下戸のわたしには非常につらい世界である。で、なんとなく洗濯をすることにした。ずいぶん古い洗濯機1台が置いてあって、いったんお風呂場でかるく水洗いして泥を落としてから、その中に入れ、洗剤も入れ、スタートボタンを押した。洗濯機は横長だった。それまで正方形の洗濯機しか見たことがなかったので、「斬新なデザインだなー古いけど」と思っていた。しかし、古いけれど優秀なのか、結構早めに仕上がった。

さて干そう、と洗濯をかごに入れて運び、干そうとすると、みんながわたしをとがめるのである。「なにやってんの!?」「えー、干そうと思って」「まだ脱水してないでしょ!」「だ、脱水……?」なんだかわからないけれど、みんながあきれ顔で、結構な剣幕で、ある人はおなかを抱えながら、わたしから洗濯物を取り上げて洗濯機のところに戻ろうとするのである。わたしはわけもわからずついていくしかない。すると! 細長い洗濯機の、さっき洗濯物を入れた横に、もうひとつ蓋があるのだ。「?????」もう一つのふたのほうに濡れた洗濯物を入れ、ボタンを押す。すると、回り始めるのだ。そう、この洗濯機は「ニソーシキ」というもので、洗濯槽と脱水槽が別々なのであった。生まれてこのかた全自動洗濯機しかみたことがなかったんです(涙)この時、20歳まであと2週間。立派な学者になりたいと思っていました。美人考古学者ってかっこいいと思っていました。カマも使えないのにッ!!

……全然発掘も始まらないまま、次回へ続きます。


# by tomo4u2u | 2013-11-05 23:53 | エンゼルパイのミーム

第10回 黒い脚が通る

テレビ朝日の『アメトーーク』は、お笑いコンビの雨上がり決死隊が、毎回コアなテーマに詳しい芸人やタレントを集めてトークする番組である。人気企画のひとつに「女の子大好き芸人」があり、女の子のことが大好きな芸人(女好き、とは一線を画す)が、好きな女の子のタイプなどについて語る。他愛のないものだが、好きな芸人さんが多く出演するので(徳井義実[チュートリアル]、渡部建[アンジャッシュ]、坪倉由幸[我が家]など)、毎回楽しみにしている。しかし、男性の好みからは考えさせられることも多いものだ。たとえば好きな女の子ファッションについて。「教典」(ファッション誌)の志向の違いについては以前触れたが、男性が崇拝する神様と自分の神様が違うことだって往々にして起こりうる。
 
男性の好む女性のファッションは、いつもどこかしら女性の心に「?」を残すものであり、赤文字系=絶対的なモテではないのだ。ウケると思ってフェミニンなワンピースを着てデートに出かけても、実は彼はお団子ヘアにモッズコートの青文字系が好きだ、ということだってある。そんな中、多くの男性と赤文字系の女性が「できれば避けたい」と共通に考えているファッショングッズがある。それが「レギンス」というものである。
 
レギンスは、股引状の女性のボトムスである。80年代に流行したスパッツ(一時期はカルソンとも)は、レギンスと名を変えて07~08年ごろに再登場し、ブームを巻き起こした。そして、真夏の猛暑日に、ショートパンツの下にレギンスを着用している女性が増えたのである。あせもの心配などものともせず、まるで、生足にショートパンツを穿くことがタブーであるかのようにレギンスは蔓延していった。当時、この異常事態に際し、レギンスの存在感について考える記事が、男性向け、女性向け問わず散見された。男性の意見はだいたい「ない」「デートに履いてこられると、拒否されていると感じる」というものだった。そして、「レギンス=貞操帯である」という言説も流布していった。
 
レギンスが男性受けしないこともあってか、赤文字系ファッションにはほとんどレギンスは浸透しなかった。オフィスカジュアルにレギンスが相応しくないという配慮もあっただろう。しかし、一見タイツ風に見えるトレンカを入り口に、徐々に広がっていった。おそるべしレギンス。個人的には、脚を締め付けるのはパンストでも同じだし、レギンスのよさはいまひとつわからない。脚をきれいに見せるのは生足かパンストだ、好きだ、と思ってしまう。筆者が自分の身体すら男目線で見ているせいなのかもしれない。13年現在、レギンスはようやく勢力を弱めてきており、この夏は生足にショートパンツの女性が街を闊歩していたし、パンストも復権してきた。
 
多くの時間をパンストとヒールで、それが普通の世界で生きてきたのだが、どうやら詩を書く女性は、レギンスやパンツスタイルを好む人が多いようだ。脚をみせないこと、それは何のバイアスなのだろうか、と考えることもある。古舘伊知郎が、以前「眼鏡は顔のコンドーム」云々と主張していたのをつまらない、と思っていたのだが、実はそれに似ているのかもしれない。奥ゆかしいのもいいけれど、隠してばかりでもつまらない(もちろん、年代にもよりけりだが)。脚はそこにあるものだから。「詩で自分をさらけ出すんです」というのはよいのだが、常に肌を隠し続けると、「さらけ出す」ことに必要以上に臆病になってしまうのではないか、となんとなく心配になる。
# by tomo4u2u | 2013-10-20 22:52 | 現代詩赤文字系